当初から意図したものではなく、窯の中で炎に焼かれ、器の表面に偶然生じた模様のことを「景色」と呼びます。釉の流れや貫入(ひび)、焼きムラなどは人間の意のままにはならないもの。陶芸の世界では、それらの不完全とも思える産物を「自然」の領域に入るものと捉え、「景色」という自然を指す言葉を使ってきました。特に日本人は、この自然の力に対して深い畏敬の念を抱いてきました。
相良焼の作品にも、偶然という言葉だけでは片付けることのできない景色が、立ち現れることがあります。“焼き物”とは、人の手が届かないことさえ起こる深い世界でもあると思っています。