『人々に愛され続ける個性豊かな器を』

「好きな器を自分の手で作りたい」原点はここからです。どうせやるなら本格的な窯をと思い、一般的な穴窯の構造とは異なるを窯で焼く「相良焼」を名乗ることとしました。
自然と感性の融合が創り出すこの相良焼は、同じ形のものは二つとしてできることがありません。
一つひとつが個性豊かな仕上がりだからこそ、目にも手にも愛着がわきます。
ここで創造されたすべてのものは、記録よりも記憶に残る作品として人々に愛され続けていくことを願っています。
相良焼には作り手の個性と感情、姿勢がめいっぱい籠められています。

相良焼「梓」初代窯元 田中 健一

 
 

相良焼「梓」窯元 田中健一 インタビュー

人生の分岐点で、ふと立ち止まった時に気づいた「好きな珈琲を飲むための器がない」から始まった陶芸への道。それまで培ってきた感覚や好奇心、そして出会いを一心に注ぎ、新しいスタイルの作品に昇華させる窯元に話を伺いました。

大好きな珈琲を飲むための器が欲しかった

初代窯元として「梓」を立ち上げたのはなぜですか?

50歳までにひと通り色々なことを経験してきて、遊び疲れた頃(笑)、なぜか急に大好きな珈琲を飲むための、気に入った器がないことに気づいたんです。その時はなんとなく「自分で作ってみたらどうかな」と思ったりして。そうこうするうちに、ふと出逢った人との縁と、”人吉”という環境の良さも相まってこの地での制作を決めました。

人吉の土へのこだわりがあったのでしょうか

いやいや、原材料や土などには一切のこだわりを持たないのが、こだわりとでもいうべきかもしれない。ほかの陶芸家や人が相手にしないような土の方が面白いの。焼きが終わって、窯を開けるまで「どんな器になっているか」も分からないところが楽しいんだよね。

それが「相良焼」の特徴なんですね

人吉に元よりある窯元とは関係なくて、相良藩からその名をもらって僕が自分で「相良焼」と名付けたのね。初代窯元として、ここでしか出せない、唯一無二の“景色”を生み出していると自負してます。

陶芸の可能性が広がるオリジナルの穴窯

窯にこだわりがあるそうですが、どのような特徴なのでしょうか?

一般的な穴窯って、地を這うような作りになっているから、人間一人がやっと入れるような出入口なんだけれど、梓の穴窯は大人が立ったまま入れる高さにしたんですよ。これは作業がしやすいだけじゃなく、他の穴窯では作ることのできない大物、つまりオブジェなんかも焼けるということなんだよね。構造が全く違うってことは、それだけ楽しいことができるということにもつながるよね。

新しい工房の姿を目指して

工房としては”新しい試み”にも取り組んでらっしゃいます

そう!梓には、1週間でも、1ヶ月でも2ヶ月でも泊まれるような宿泊施設があって、陶芸好きが来て一日中、陶芸に没頭することができるの。本当に陶芸が好きな人にとっては、ここが天国だよね。朝から作品を作り、夜は語りあい、寝泊りをともにして。

それは幸せですね

工房に集まる仲間たちが笑顔で楽しんで、そして喜んでくれることが、僕自身の幸せでもある。

【インタビューを終えて】
ここを訪れる人はみんな、肩書や日常を忘れて一人の人間として童心に返り、純粋な気持ちでただただ自分の時間を楽しむことができる。梓はそんな場所だと感じました。今後、梓という場所は私たちにとっても、今までにない新たな”景色”を見せてくる場所になるはずです。

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